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って言われても....それができれば苦労はない! LIONSにもこだわりあり!


by teddy0021
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第93回 【 砂の城 】

第93回 【 砂の城 】_c0020030_21203969.jpg
第93回は、最近、「デザイナー」が昼ドラでドラマ化された
一条ゆかりさんの「砂の城」を採り上げました。
1977年に第一部、1980~81年に第二部がりぼんに連載され、
コミックスは全8巻、ガールズコミック全3巻、文庫全4巻があり、
さらに、クイーンズ・コミックス・プレミアムが全6巻完結となっています。
97年ぐらいに昼ドラでドラマ化されたと聞いています。
第1部は高校時代に「りぼん」で読んだ記憶がありますが、
ブログで仲良くしていただいている「ほんの日記」のブラッドさんからのお薦めもあり、
最近、すばる書店白井店さんからプレミアム版をレンタルし、通しで読みきりました。

それでは、序盤部分のあらすじを...。
名門ローム家の長女としてフランスの海沿いの町で暖かい祝福の下生まれた「ナタリー」。
一方、同じ日に彼女の家の門前に捨てられ、祝福ムードの中、ローム家に引き取られた少年「フランシス」。二人は仲の良い兄妹のように育ち、やがて二人は純粋な心で結びつく。
フランシスはナタリーにふさわしい男になるべく、寄宿学校で3年間勉学に励むが、
その時間が二人の心の結びつきをさらに強めることとなった。
両親の理解とは裏腹に、叔母が家名の為に捨て子のフランシスとの結婚に大反対。
その声に憤りながらも、ナタリーはフランシスと結婚の約束を....。
そんな時、ナタリーの両親の突然の事故死!
後見人である叔母が結婚を許さず、二人は駆け落ちするが、
追い詰められ、断崖から海へ投身する。
一人助かったナタリーは家を出て、親友「エレーヌ」が働く出版社に認められ、
童話作家としてのスタートを切る。
フランシスが亡くなって長い月日がたっても忘れられないナタリーだったが、
ある日、フランシスを見たという情報が...。

当時の「りぼん」では、「陸奥A子」さん、「篠崎まこと」さん、
田淵由美子」さん、「太刀掛秀子」さんなど、乙女チック路線が主流だったんですが、
この一条ゆかりさんの漫画は異彩を放っていましたね。
その頃の私では十分理解できない部分が多々ありながらも、気になる漫画家でした。
そんな印象もあり、第一部も読んだはずだったんですが、
序盤、こんなに過酷な出来事のオンパレードだったなんて!
怒涛の勢いでストーリーが急展開し、どんどん惹き付けられました。
そして、ナタリーがヤングフランシスの後見人になった後は、じっくりと展開。
愛してはいけない人を愛さずにはいられない二人それぞれのエゴ、葛藤....
歳の差を越えて愛し合いながら、やはり、完全には理解し信じあえない二人。
また、二人の周りに登場する人たちの優しさ、孤独、誤解、愛憎...。
彼らを取り巻く登場人物それぞれの愛を描いたストーリーも様々な色付けを与えていますね。
ただ、「ミルフィーヌ」...気持ちは分からないでもないですが、個人的には苦手なタイプです(笑)

主人公の子供時代から青春時代までを描く漫画は沢山あります。
そして、エンディングでいきなりその後の幸せな人生を見せて納得させる漫画もあります。
しかし、過去の過酷なドラマをベースにしながら、
20代~30代の女性の心の中をこうまでシリアスに描く漫画は少ないでしょうね。
男性の私は、一条さんが描こうとする、
女性であるナタリーの、一種病的なまでのフランシスへの想いを
十分に理解できていないかも知れません。
しかし、ある人を本当に心底愛してしまった場合に、
その人が離れそうになる時に(あるいはそう思えてしまう時に)、
心を過ぎる異常なまでの寂しさ、それを拒否しようとするが故の尋常でない行動...
わかるような気がします。

レーティングは★★★★(4.0)です。
ストーリー展開と重いながら繊細な心理描写に囚われがちですが、
ファッション、フランスの城、家、木々、花、家具、調度品、差し込む光...
非常に細かく綺麗に描かれていて、さすがの画力ですね。
「人生なんて砂の城のようなものかもしれないわ。つくっても、つくっても、
いつの間にか波がさらってしまう。いつも同じ事のくりかえし...」、
ナタリーの「喪失感」と「不安」で構築された「生き方」「感じ方」....
私には少々辛過ぎますが、
素直過ぎるまでの心を持ち成長するフランシスが救いです。
それにしても、あのラストは切ない.....。
by teddy0021 | 2005-11-30 21:29 | ★お薦め?コミック