第88回 【 海の天辺 】
2005年 11月 08日
また、前回から大幅に間が空いてしまいましたが、
第88回は、前回の「天然コケッコー」に続いて、
くらもちふさこさんの「海の天辺」を採り上げました。
「別冊マーガレット」に1998年~2000年に連載され、コミックスは全4巻完結です。
他に文庫全2巻もあるようです。
私のヨメさんが、最近、友人から借りてきたものを読ませて頂きました。
私が買った「天然コケッコー」全巻を、ヨメさんも早速読んだことがきっかけで、
くらもちさんの話題となり、友人から貸してもらったみたいです。ラッキー!
では、イントロダクションを。
ヒロイン「椎名和佳子」(シーナ)は、タッパのある、東京の区立中学の2年生。
S県から通う電車の中で、22歳で理科担当の「河野先生」との会話が嬉しい。
普段は車で通勤していた河野先生が、事故が原因でひとまず電車に切り替えたお陰だが、
その同乗者の女性に対する噂もあって、淡い恋心を抱く和佳子には気になる。
そして、3年生への進級クラス替えで、担任はなんとその河野先生!
担任となったこともあり、コンタクトする機会が増えて、小さな幸せを感じる和佳子。
ある日の理科の課外授業は「サンシャイン水族館」見学。
ジュゴン(=人魚)を前に誰かが囁いた…
「人魚は 瞳を開いて 最初に見た人間に 恋をするんだって」。
シーナの目の前には、河野先生がいた…
シーナと河野先生を取り巻くストーリーが動き出した。
うーん、やっぱり、くらもちさんの描く漫画は、
繊細に、丁寧に、心に訴えてくれます。
中学時代は男子校の私には直接そうした場面に出くわすチャンスが無かったんですが、
「先生に恋する女の子」は言わば初恋の王道の一つというイメージが、
少女漫画好きだった私にはありました。
ただ、くらもちさんの、この「海の天辺」に描かれる魅力溢れる男の先生と
中3の素直な優しい女の子のお話は、
途中に起こるいろいろな出来事と周り登場人物の反応を含めて、
非常にリアルなんですね。
また、それが、時の流れ、会話の間、周りの風景などをうまく取り込みながら、
実に繊細に表現されていくわけです。
小学生の頃から、シーナを好きだった優秀で思いやりのある「遠藤」君。
背丈がシーナに足りないコンプレックスをちょっぴり持ちながらも、なかなかナイスガイです。
勉強とは違うところで逆贔屓する先生…いますよね!(私も経験あり!)
男女共学でなかった私にも容易に想像できる中学生達の騒ぎ様、
友人との付き合い方、無神経にも映る親の関わり方…
読み手が自然に頷けるように、本当に良く描かれています。
レーティングは★★★★☆(4.5)です。
シーナの感情の動き、河野先生の表情の一瞬の変化、
コマ割りや情景の切り出し方などなど…さすが、くらもちさんという感じですね。
コミックス4巻並べると分かる外装のおしゃれさもGood!
こんなに褒め言葉しかないのに、何故、4.5?
あえて言えば、「キョーチ」の好きな相手が、私には初めからピンと来てしまったこと、
河野先生が選んだ結論へのプロセスが今ひとつ釈然としないこと...ぐらいでしょうか?
でも、そんなことぐらい、まったく気にならない珠玉の作品のひとつだと思います。
おまけ
短編で「冬・春・あなた」という作品があって、確か、背の高いヒロインが出てくるんですが、
もしかして、くらもちさんはかなり背が高いんでしょうか?