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って言われても....それができれば苦労はない! LIONSにもこだわりあり!


by teddy0021
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第87回 【 天然コケッコー 】

第87回 【 天然コケッコー 】_c0020030_20593281.jpg
第87回は、以前「いつもポケットにショパン」をご紹介した、
くらもちふさこさんの「天然コケッコー」を採り上げました。
「コーラス」に1994年~2000年に連載され、
コミックスは全14巻完結、文庫は全9巻です。
くらもちさんの最長連載作品で第20回講談社漫画賞を受賞しています。
いつものようにすばる書店白井店さんからレンタルして最近読み終えました。

ファンの方ならご存知でしょうけど、とりあえず1話のご紹介...
ヒロイン「右田そよ」は小・中学校併せて全校生徒6人の学校の中学2年生。
彼女達が住んでいる小さな村に東京からの転入生がやってくるらしい。
初めての同級生ということもあってワクワクしながらお迎えの準備をしていると、
まだおトイレのコントロールがうまく出来ない最年少の「サッチャン」がお漏らしを...
いつものように後始末をするそよ。
そこに転入生「大沢広海」が登場し、給食のりんごを手渡ししようとするそよに、
「手―、よく洗った?アンモニアくさいデザートなんていやじゃん」....

ブログで仲良くして頂いている「なれのはて」(HP:shortcake)のshortさんから
お薦めいただいた作品で、
くらもちさんの絵柄の変化を確認する意味でも、興味が湧いていました。
私が知っている初期の「白いアイドル」「赤いガラス窓」...の作品と比べると、
二段階くらい、描画やキャラデザインが変わっていましたが、
やはり、くらもちさんらしいテイストははっきり残っていますね。

このお話、まずは舞台が魅力に溢れていると思います。
日差しと土の匂い、潮と草の香りを含んだ風が頬に当たる感触、
虫やニワトリの声、方言の心地よさ.....
どちらかというと田舎生まれの私は、子供の頃、さらに田舎に遊びに行った経験も多くて、
描かれている何気ない風景や小さな出来事が、
緩やかに、でも埋もれずに、流れていく「日常」が違和感なく心に入ってきました。

初め九州弁かな?と思いましたが、読んでいくと微妙に、いや、かなり違う…
地名は?? 「中居町」「森町」「木村」「香取郡」「稲垣」「草なぎ」...
何だか聞いたような名前ばかり.....あっ、SM○Pではないの?
デパート「天波屋」は、「天満屋」のこと?だとすれば、岡山あたりか?
などと、「舞台はどこだろう」と考えることも楽しみの一つになってしまいました。
「島根県那賀郡三隅町岡見」だとか?
その地元で2002年に「くらもちふさこ原画展」が催されたとか...羨ましいなぁ。

「そよ」ちゃん、すごく素直で、田舎の良いところをいっぱい持った良い子です。
しっかりしている反面、少し気が強くて意地っ張りってところも大好きですね。
田舎の抱える問題点を少し恥じながらも、すごく愛しているところも共感を覚えます。
「大沢」君も、くらもちさんらしいキャラ(少しぶっきらぼうで、掴みどころがないけど、
優しい部分を持ち合わせる)で、くらもちさんのマンガを知る読者としては安心できますよね。
少々浮気っぽいところもありますが、現実の中高生の意識に近いんではないでしょうか?
小・中学校から高校に進学して、成長しながら、
思春期~青春時代の恋が瑞々しく伝わってきますね。
脇を固める「あっちゃん」「浩太郎」「シゲさん」...皆、それぞれ他にない魅力があって、
それも同じく成長しながら、物語に巧みに織り込んでいくのもうまいと思いますね。
高校時代に登場するメンバー「宇佐美」「田中」「遠山」なども、
少し毒を持っている部分も含めて、皆「リアル」...というより「ナチュラル」さを感じます。

レーティングは、★★★★★(5.0)、満点です。
初め見た時は、絵が荒くなった...と思いましたが、洗練されたという方が正しいかも?
省略できるところは省略して、ひとつのコマの中、そのシーン全体で大事なところは
ディティールまでしっかり押さえている印象です。
表情やセリフにもさすがって思わせるところが沢山あって、
思わず頷きそうになったり、自然に頬が緩んだり、クスッと笑えたりする場面も。
特に、そのシーンの雰囲気が微妙に変わるような、
「一瞬の空気の流れの変化」を描くのは天才的だと思います。
また、ずっとセリフがないページが続くお話や、
全てネコを媒体にしたようなストーリーの見せ方など、
展開方法、構成力にも唸らせられるところが多かったですね。

「ラストが物足りない」って人もいるかも知れませんが、
この作品には合っていると思います。
ストーリー展開にどんどん惹きこまれたり、
涙が出てきたりって感じではないんですが、
じんわりその雰囲気を楽しむことが出来る、
いろいろな引き出しを持っている実に良質な佳作と思います。

おまけ
「あっちゃん」による投稿漫画の原稿が差し込まれ、巻末にも載っていて、
楽しめます。ちゃんと批評も載っていて芸が細かい!
この絵を描いたのは、くらもちさん?アシスタントの方?気になりますネ。
by teddy0021 | 2005-09-13 21:11 | ★お薦め?コミック