第74回 【 リョウ 】
2005年 06月 21日
第74回は、現在、NHKの大河ドラマにもなっている「義経」にちなんだ
上田倫子さんの「リョウ」を採り上げました。
1995~1999年に週刊マーガレットに連載され、
コミックスは全13巻完結、文庫も8月から発売開始のようです。
篠原千絵さんの「天は赤い河のほとり」と同様に、
当ブログに良くご訪問・コメントを頂いているミナさん
(ブログ・タイトル:乙女ノ読物)に、
私のわがままな条件(長編、完結、きれいな絵柄etc)を前提に
ご紹介頂いた作品のひとつです。
すばる書店白井店さんからレンタルしました。
物語はこんな感じで進んでいきます。
主人公「遠山りょう」は現代の明るい女子高生。
幼馴染の同級生の男の子「葵」らと楽しい京都の修学旅行へ。
その京都の五条大橋で、突然現れた長髪、大男の修行僧から襲われかける。
この男は自らを「武蔵坊弁慶」と言い、りょうを「牛若丸=義経」だと言う。
初めはまともに取り合わないりょうだが、剣道道場師範である祖父「玄一郎」は
何故かしばらく様子を見ようとする。
時代錯誤の生真面目な美男子「弁慶」に次第に興味を抱くりょうだったが、
ある日、祖父から、自分が「富士の樹海でさまよっていた平安衣装の子供」であり、
「7歳の時に交通事故で他界したりょう」の記憶を移植された別人であることを告げられる…
追われる「弁慶」をかばいながら、「弁慶」の元恋人という「虎子」、
りょうを好きで慕う幼馴染「葵」とともにりょうは富士樹海の時限の割れ目に飛び込む。
女義経「りょう」と「弁慶」の数奇な運命は再び動き出した…
大河の「義経」も見ていませんし、歴史も自信がない私にとって、
史実へのこだわりがありません。
おかげで、義経が女であるという設定の大胆さが読み進む障害にはなりませんでしたし、
タイムスリップで話を盛り上げるっていうのも割と好きなので、
途中からはけっこうワクワクしながら次の巻、次の巻とどんどん惹き込まれてました。
単なる「タイプスリップ恋愛モノ」に終わっていません。
話の展開も面白いですし、巻が進むにつれ絵柄も細かくなって綺麗です。横顔なんかも…。
13巻分にいろいろ詰め込みすぎて、時々シーンが
余りにサラッと進んでしまう場面もありますが、
ダラダラし過ぎるのと比べればGoodです。
最近(といっても結構前から?)は、主人公の女の子にたくさんの美系の男が集まってくる
逆ハーレム状態?の少女マンガが多いんでしょうか?
読者も男前「弁慶」はもちろん、「維盛」のファンも多かったでしょうね。
「海尊」や「頼朝」なども…
明るさ以外大して取り柄のなさそうな「りょう」がその運命を受け入れ始め、
凛とした部分を持ちながら、決して心底から人を憎めない優しさを心に抱きながら
弁慶を愛していく姿は好感を持ちましたね。
(その優しさからか、時々、気持ちが浮気する時もありますが:笑)
レーティングは★★★★☆(4.5)です。
ラストが良いです!読んだのが電車の中だったので危なかったです(笑)。
上田倫子さんも最後をきっちり考えてから物語をスタートさせたんでしょうね。
そして、読了感が何とも切ない....
私は読み始めてしばらくしてから「葵」に注目していました。
大したキャラでもなさそうなのに、平安の世界までついていくなんてと…何かあるハズだ!
物語を柔らかくするための一種の「癒し系キャラ」なのかと
失望しかかった時もありましたが(笑)…
そういう意味でも最後は非常に納得が行ってます。