第59回 【 おーい!竜馬 】
2005年 05月 17日
前回の安彦良和氏の「王道の狗」が明治時代中期以降のお話で、
その中に有名な「勝海舟」が出てきました。その連想で、
第59回は、原作武田鉄矢氏、作画小山ゆう氏の
「おーい!竜馬」を採り上げました。
1987~1996年までヤングサンデーに連載され、コミックスは全23巻完結、
ワイド版が全14巻完結、文庫が全14巻完結となっています。
私はすばる書店白井店さんからワイド版をレンタルして読みました。
幕末に大志を抱き奔走した「坂本竜馬(龍馬)」のお話です。
土佐藩(高知)の郷士の末っ子である竜馬は、武士の子でありながら泣き虫で勉強嫌い。
男勝りの姉「乙女」に助けられ、叱咤され、期待されている。
7歳になって楠山塾、日根野道場に入門するが、文武とも落ちこぼれ。
塾は退塾処分となる始末。
ある日、竜馬を優しく見守ってくれる病床の母「幸」と花見へ行き、
いじめっ子達も幸の優しさに触れ病弱な幸のために日傘を作ってくれた。
土佐では禁止されている郷土の日傘を、通りかかった上士達に目撃され、
めちゃめちゃにされてしまう。
歯向かった「以蔵」の「真剣なら勝てた」という言葉がきっかけになり、
誤解も加わって、道場で上士は郷士に試合を申し込む。
立会人は、後に竜馬を応援することになる家老の娘、「加代」。
先輩で優等生の「武市」、以蔵、竜馬らが奮戦し、
最後は竜馬の片手上段で勝利し、一躍人気者に。
その後、3人で天狗退治に行き、実は天狗=異人であり、
その異人を海へ返してやるために加代も加わる。
加代の家来となって殿「山内容堂」の行列に加わる竜馬だったが、
はずみで立ち上がった百姓の子供らがその場で切り捨てられ、
逆上した竜馬は容堂に刃を向けてしまう。
監禁された竜馬を励まし禁じられた差し入れを行った病弱の幸は責められ、
結果として死んでしまう。
竜馬の心には、理不尽な制度、差別が引き起こした悲劇から
世の中を変える気持ちが芽生えていく…。
長いあらすじになってしまいましたが、これでも物語の序盤~第1章といった感じです。
「坂本竜馬」自体はもちろん有名ですし、歴史に詳しくない私でも
おおよそ何をやったかは知っていました。
しかし、このマンガでは、竜馬の幼少の頃からの話からスタートしており、
司馬遼太郎の「竜馬が行く」でも扱わなかった部分ですので、ユニークです。
話には、海援隊の武田鉄矢氏(俳優でも有名ですね)のアイデアがふんだんに
取り入れられているようで、史実がはっきりしているものが基本踏襲し、
そうでない部分については、可能性としてあり得るケースを想定し、
「こうだったら面白い」といった要素が反映されている気がします。
レーティングは★★★★☆(4.5)ですね。
小山ゆう氏のマンガは、すごく絵がうまいわけではないと思いますが、表情が豊かですし、
コミカルな部分とシリアスな部分がうまく描き分けられている印象がありますね。
土佐藩の上士と郷士の身分格差とその理不尽さがしっかり描かれ、
それに立ち向かって行く竜馬の人物像にもどんどん魅かれていきます。
登場人物のキャラクター描写も秀逸ですし、
ポイントとなるいくつかの場面では涙が出てきたり、熱くなったり、十分に堪能できますね。
この頃の歴史に非常に詳しい(思い入れがある)方には
「えっ?」という部分もあるかも知れませんが、
歴史教科書ではありませんし、許しましょう!
でも、歴史も身近に感じられて勉強になりますよ。
おまけ
武田鉄矢氏に関して、私は役者としても結構好きです。
「3年B組金八先生」でみせるような、鼻水を流しながら、
真っ赤な顔して泣きながら生徒に教えようとする体当たりの演技、
ついつい涙をもらってしまいます。