第49回 【 告白~コンフェッション~ 】
2005年 03月 31日
前回の「デビルマン」(永井豪氏)の中では
人間の異常心理の暴発という点がひとつのポイントになりました。
第49回は、違ったシチュエーションでの「異常な心理」状態を
描写した「告白~コンフェッション~」を採り上げました。
なんと、原作が福本伸行氏、作画がかわぐちかいじ氏という
ビッグなコラボレーションとなってます。
ヤングマガジンアッパーズに1998年に連載されていた中篇で、
コミックスは全1巻完結ですが、ワイド版ぐらいの厚さです。
いつものように、すばる書店白井店さんからレンタルしました。
はじまりは、だいたい次のような感じです。
「浅井」は2年に一度の山岳部OBたちと登る親睦の山「尾張」で、
「石倉」と二人で遭難しかける。
何人かで登るはずが急遽都合の付かないものが続出し、二人だけで登ることになったのだ。
事故で石倉は足に大怪我をし、5m先も見えないブリザードの中、山小屋に辿り着けない。
そこで、死を覚悟した石倉が、突然、泣きながら告白を始めた。
「さゆりを殺したのはオレなんだ。」
同じ山岳部だった「西田さゆり」は事故ではなく、石倉が殺したのだと...
しかし、話して、あきらめかかったところで、実は山小屋の目の前まで来ていることが判明。
浅井は石倉を背負い、山小屋に辿り着き、連絡を取ると、二日後には助けが来るようだ。
しかし、石倉の態度が変わった...明らかに告白したことを後悔しているようなのだ。
そして、その後悔が、殺意に変わり始める...
片足が動かない石倉と高山病になり視力が急速に衰え始める浅井。
山小屋という狭い空間の中で二人だけの異様な世界が動き出す...
第1ページは、真っ黒のベタの中に、白抜きで
「聞いてしまったあいつが....悪いのだ....!!」の文字だけ。
さすがに、追い詰められた者の心理描写にかけては第一人者と呼ばれる「福本」氏。
二人だけの密室に近い空間での心理戦、実に読み応えがあります。
しかし、ブリザードで外に出られないような環境で、二晩、
衰弱し、普通に動けない状態の二人の命のやり取りを描くには
リアルな迫力のある絵がどうしても欲しい...
そこで、かわぐち氏の登場なのでしょうか?
レーティングは★★★★(4.0)です。
良く読んでみると、実はちょっとした矛盾点がいくつか見られますが、
それを無視すれば(気付かなければ)、お互いの心理の読み合い、
立場の逆転、さらに逆転...どんどん引き込まれていきます。
(おかげで、電車で乗り越しそうになってしまいました)
物語の最終ページも、最初とまったく同じ。
真っ黒のベタの中に、白抜きで
「聞いてしまったあいつが....悪いのだ....!!」。
同じ言葉ではあるのですが.........!?。